パパの手間いらず庭づくり+

庭づくりとガーデニング ときどき園芸雑貨 たまに庭遊び

【植物の分類】宿根草と多年草の違いとは?一年草、二年草、低木の特徴も詳しく解説!

 今回の記事はコラムということで,植物の分類についてまとめてみました。『ガーデニング』は植物学がベースになっていますが,用語の定義などが何かと曖昧なことや間違いが多いです。(良くある間違い:ローズマリー:多年草・宿根草✕ 低木〇,クリスマスローズ:宿根草✕ 常緑多年草〇 等々)

 そこで今回は,初心者には分かりにくい『多年草』と『宿根草』の分類・違いに中心に植物の分類をまとめてみました。(宿根草は「しゅっこんそう」と読みます。)

 日本の園芸界の現状の分類の他,植物学,海外の園芸界の考え方とも比較して,厳密を喫しながらも,分かり易く図示して正しい分類を紹介していきます。

 

植物の分類

  次が植物の分類をツリー状に示したものです。まず植物は大きく『樹木(木本)』と『草花(草本)』に分かれるのですが,今回は草のみについて書いています。木の分類については,また別記事で記事の後半に紹介しています。

f:id:enoshima07:20200822065323p:plain

  まず草花(草本)は,植物の最初の枝分かれで,『一年草』『二年草』『多年草』の3つに分類されます。

一年草:Annual Plant

 一年草は,発芽から開花さらに枯れるまでのサイクルが1年間(Annual)の植物です。種から発芽し,花を咲かせた後に種になる,という1年サイクルの植物が典型例です。また本来は多年草(この後出てきます)でも,日本の環境では一年草『扱い』と表記されているものも見かけます。

 こちらが,一年草の実例として我が家にある一年草を紹介しています。

www.papa-niwa.com

二年草:Biennial Plant

 二年草は,発芽した状態で1年越して2年目に開花してその年に枯れる植物です。つまり,生死のサイクルが2年間の植物(Biennial)です。

多年草:Perennial Plant/Perennials

 多年草は,一度株が成長したら何年も枯れずに生き続ける植物です。英名は,『Perennial Plant』もしくは,単語1つで『Perennials』です。『Perennial』とは,「多年性の」とか「長く生き続ける」という意味の形容詞で,『Perennial Plant』を直訳すると多年性植物となります。

『Perennial Plant』は植物なので,本来,草本だけでなく木本も含まれますが,木は元々「多年性」を持つので,多くの場合『Perennial Plant』は草である『多年草』を表します。

 

 以上のことから基本的な植物(草)の分類は,『一年草』,『二年草』,『多年草』の3つになります。また,これらは『草(草本,草花)』のみに使われます。 

 

 ここで『多年草』の中に,『常緑多年草』と『球根植物』,『宿根草』の3つが含まれます。

多年草の分類

f:id:enoshima07:20200821105125j:plain

常緑多年草:Evergreen Perennial (flowering) Plant 

 代表的なところですが,例えば「クリスマスローズ」がそれに該当します。常緑(Evergreen)の名の通り,1年中葉が枯れずに残る植物です。1年中葉を残している時点で1年で枯れる1年草はあり得ませんし,実際多年性を持つので,『多年草』の1つとして分類されることはリーズナブルです。

www.papa-niwa.com

球根植物:Perennial Bulbous Plant

 「チューリップ」や「シクラメン」などの球根性(Bulbous)の植物が該当します。球根植物はその性質上から多年性を持ちますので,『多年草』の1つとして分類されます。

宿根草:英名なし

 それでは宿根草(「しゅっこんそう」と読みます)とは何なのでしょうか?

宿根草とは多年草の中で,常緑多年草ではなく,球根植物でもない草花です。つまりその名の通り,毎年休眠期(冬,夏)に地上部の一部あるいは全体が枯れるが,根は枯れずに休眠し,成長期にまた芽吹く草花です。『宿根』という言葉からは,根が宿す(が一方地上部は枯れる)ことを意味していると解釈され,妥当な定義です。例えば,『サルビア』や『エキナセア』などがそれに該当します。

ちなみに,海外では宿根草』に相当する単語がなく,そのため英訳も存在しません。葉が枯れるかどうか,どの程度葉が残るかは人の感覚なので,妥当な分類だと思います。

 日本で『宿根草』の英訳を『Perennial Plant』としているものも見かけます。

『宿根草』が『多年草』(Perennial Plant)に含まれるという意味では正しいのですが,逆に『多年草』の1つであり常緑の「常緑多年草(Evergreen Perennial Plant)」は宿根しないので,明らかに『宿根草』ではないです。つまり,『宿根草』=『Perennial Plant』というのは不正確です。

www.papa-niwa.com

園芸上の分類

f:id:enoshima07:20200821105232j:plain

 

 以上が植物学的な分類と,それと共通する海外の園芸界での分類を紹介しました。

 ところで,最近では本記事と同じ分類を示すメディアも見かけますが(本記事の影響か最近増えている感覚がありますが…),いまだに『常緑多年草』や『球根植物』まで含めて『宿根草』と呼んだり,それどころか木である『低木』すら『宿根草』とする記載を目にします。このように,日本の園芸界および関連メディアでは,いまだに混乱が見られます。

余談①:常緑の「クリスマスローズ」を『宿根草』と分類することは,”便宜的な分類”云々以前に,日本語として成立していないのでは?と個人的に違和感を持っています。

余談②:たまに「園芸界では便宜的に『宿根草』に分類しているだけで・・・」といったエクスキューズ的な記述を見かけますが,少なくとも海外の園芸界は正しく分類しています。

海外の園芸上での分類方法(=本記事の分類)

 海外での分類をより詳しく書きますと,1年草(Annual Plant),2年草(Biennial Plant),多年草(Perennial Plant)という分類が基本で,さらに多年草の中で常緑のものを『常緑多年草』,球根性ものを『球根植物』とする分類になっています。

 つまり,本記事で書いている植物学上の分類と同じです。そして唯一の違いは,『宿根草』に相当する分類がないことです。つまり,宿根草に分類される『サルビア』は,海外では総称である多年草(Perennial Plant)に分類されます。

 それでは,日本の園芸界での分類はなんでこのように曖昧なのでしょうか?自分は次のように想像しています。(経緯が間違っていたらすみません)

日本の園芸界で分類が統一されない経緯・理由を推測 

 おそらく多年草(Perennial Plant)という言葉が輸入される以前から,宿根草というフワっとした園芸用語があった。そこに,『Perennial Plant』という植物の性質を適切に言い当てた言葉が輸入された。そこで,既存の『宿根草』を訳に充てることも考えたが,意味が一致しない。そこで適切な日本語訳として『多年草』という新しい言葉が生まれ,その結果,『多年草』と似て非なる言葉である『宿根草』がバッティングしてしまった。植物学的には,この記事で書いたように『宿根草』を『多年草』の一部とすることで,すっきりと分類できた。

 一方,日本の園芸界では整理が進まず,曖昧なものが曖昧なまま残り,フワっとした言葉である『宿根草』に『常緑多年草』を含める分類や,『宿根草』=『多年草』とする分類が混在し,統一されることなく今に至った。そんなところだろうと思っています。

 

 いずれにしても『宿根草』というと,「冬に地上部が枯れ、地中で根が休眠している」ことを含意する言葉なのに『常緑多年草』や草ですらない「低木」ですら宿根草に分類される場合があるのは違和感を感じます。従って今後も今回の記事で紹介したリーズナブルな基準(=植物学=海外の園芸界の基準)で分類していきたいと思っています。

 

最初は草っぽいけど木質化する植物は?

f:id:enoshima07:20200606163246j:plain

 最後に,これまた『多年草』や『宿根草』と間違えやすい『常緑低木』について正しい定義をみて行きたいと思います。

 例えば『ローズマリー』『ルリマツリ』『チェリーセージ』は,苗を買うときには完全に草ですが,成長すると木質化していきます。これらは多年性ではあるものの,分類上は『低木』になります。 またこれらいずれの植物も落葉せず,一年中葉をつけているので『常緑低木』(Evergreen Shrub)となります。

 これらの植物は『多年草』や『宿根草』と間違えられるときがありますが,『多年草』の英名である『Perennial Plant』をWikipediaで調べてみると,次のようにあります。

 

『The term is also widely used to distinguish plants with little or no woody growth from trees and shrubs, which are also technically perennials(出典:Wikipedia)』

 

『この用語(Perennial Plant)は,少しあるいは全く木質化しない(多年生を持つ)”植物”と,テクニカルには(実質的には)同じく多年性を持つ(木質化する)”木や低木(shrubs)”と区別するために広く用いられる』

 

 木や低木は多年性を持ちますが,木質化して草ではないので『多年草』ではない,ということなります。また,もちろん多年草に含まれる『常緑多年草』『宿根草』『球根植物』でもない,ということになります。

 

 最初の分類図を見てみます。多年草から1番上の植物まで遡り,木(木本)に降りて,さらにそこからずっと降りてきたところに『常緑低木』は位置づけられます。つまり,常緑低木と多年草は大元からして異なっている,ということが分かります。

f:id:enoshima07:20200822065401p:plain

 

↓「略」となっている部分や,さらに細かい低木の分類については,こちら記事にしてます。良かったらご覧ください。

www.papa-niwa.com

 

 最後に,次の記事では,草っぽい常緑低木の実例として,『常緑低木グランドカバー』をまとめています。つる性の常緑低木が多く含まれますが,いずれも低木類ですので,参考になるかと思います。

www.papa-niwa.com

まとめ

 今回は比較的厳密に,『多年草』『 宿根草』 違いを中心に草花(草本)を分類してみました。まとめは以下になります。分かりにくい分類の理解の助けになれば幸いです。

  • 『宿根草』は,『常緑多年草』『球根植物』とともに『多年草』に含まれる
  • 日本の園芸界では,上記分類の他,『常緑多年草』まで含めて『宿根草』と呼んだり,『多年草』=『宿根草』となっていたり,統一されていない

  • 海外の園芸界では,『常緑多年草』『球根植物』とともに『多年草』に含まれるが,『宿根草』に相当する言葉がない
  • 木質化する植物は多年性はあるが,『草(草本)』ではないので『常緑低木』に分類される