今回は常緑低木『ギンバイカ(マートル)』の成長記録についてです。ギンバイカ(銀梅花)は和名で,英名ではマートル(Myrtle)と呼ばれます。ハーブとして有名で,葉をこするとフルーティーな良い香りがします。また,銀梅花という和名のように,梅に似た白い花は存在感がありとても美しいです。
今回は,そのギンバイカの斑入り品種を地植えで育成してみました。実際育ててみて,①暑さ寒さにともに強く非常に強健,②斑入り品種は矮性なので大きくなり過ぎず育てやすく,③斑入りの小さな照り葉は美しくてしかも常緑,④花は豪華で美しい,とおすすめポイントの多い低木です。一方,花に関しては育成から3年経過してようやく待望の開花が見られたので,開花までの様子を中心に3年間の成長について紹介します。
基本情報
種類 | フトモモ科 ギンバイカ属 常緑低木 |
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学名/英名 | Myrtus communis/Myrtle |
花色 | 白 |
開花時期 | 6-7月 |
最大樹高/横張り | 1m/1m |
耐暑性/耐寒性 | 強/強 |
斑入りギンバイカの特徴
ギンバイカ(斑入りでないもの,以降はノーマルタイプと書きます。)の葉は緑一色で,斑入りのものは,緑の葉に葉の縁がクリームの色の模様となっています。
これだけみると違いは葉の模様だけに思えますが,差は他にもいくつかあり,枝葉の成長は,ノーマル>斑入りです。また,花付きは,ノーマル>斑入りです。常緑の斑入り葉を年中楽しむか,花付きの良さを選ぶか,斑入りの成長スピードがゆっくりなのを育成しやすいと取るかが,選ぶポイントかと思います。詳しい成長の様子は,この後の『成長記録』でご確認できます。
ギンバイカの葉
ギンバイカの照りのある美しい斑入り葉(バリエガータの場合)は,冬に殆ど落葉せずほぼ完全に常緑をキープします。
常緑に分類される低木でも,冬や春に葉の生え替わり時期に落葉するものがありますが,マートルは殆ど落葉しません。実際には少しは落葉しているはずですが,冬でも葉の密度が下がることを実感することはありませんでした。ここはマートルの大きな推しポイントだと思います。
斑入りの似た葉をもつ常緑低木では「アベリア」があります。葉はより小さく,白色の花の形や大きさも異なりますが,性質が強健で育てやすいところなど育成面の共通点も多いです。
ギンバイカの花
銀梅花という和名の通り,梅に似た白い花は存在感がありとても美しいです。一方,冬に寒風に強く当たると花が咲きにくいと言われ,特に斑入り品種では花が少ない,あるいは花が咲きにくいと言われます。これは肥料をやっても変わりません。実際,この記事の副題にあるように,購入時に開花していたにも関わらず再び開花するまでになんと3年もかかりました。
ギンバイカの実
ギンバイカの花が咲けば高確率で1cmくらいの小さな実ができます。そのため特に受粉などの作業は不要です。マートルの葉だけでなく,実からとれるオイルはハーブとして使われるようです。また食用可とも紹介されることが多いです。しかし,実際に生で実をかじってみると,非常に渋くて食用には適さないです。成長記録でも紹介します。
日当たり
日当たりを好みます。耐暑性はとても高く,直射日光が長時間当たっても問題ありませんし,ある程度の耐陰性もあります。また,耐寒性も高く,関東以南であれば露地植えでも育成できます。
水やり
地植えの場合は,降雨のみで水やり不要です。
成長記録
2020年6月
こちらが購入時の『斑入りギンバイカ(マートル)』です。梅に似た白い花が斑入り葉をマッチしてとても美しいです。
元々植わっていたプラ鉢から出して,家の西側にある花壇に一角に植えました。昼以降に日が当たる風通しの良い場所で,半日陰といったところです。
大きさは4号鉢だったので,株のサイズも高さ20cm, 横幅30cmといったところです。今後の成長が楽しみです。
2020年8月
夏にはもともと咲いていた花が楕円形の実になりました。実の大きさは長径が1cmくらいと小さいです。
まだ熟す前なので赤みがあります。この後,黒色に変化していきます。
2020年11月
11月になり,実がすっかりと熟してきました。
食用とのことですが,この年は「実が生っているな」と思いながらも,特に食べることも,香りを嗅いでみることもする前に,実が落ちてしまいました。
2021年2月
2月上旬に一年で一番寒い時期になりました。マートルは耐寒性も強いので,このように冬でもほぼ完全に常緑をキープします。
冬場でも葉がほとんど落ちず,青々として姿をキープするのはポイントが高いです。
2021年4月
全く問題なく初めての冬越しができ,春になりました。枝の先端から少し新しい葉が生え始めています。
背後で開花している白花は「ローダンセマム・アフリカンアイズ」です。
2021年5月
初夏になり暖かくなり,かなり新しい葉がだいぶ目立ってきました。生えたての葉は斑が少なく葉色は黄緑色のようです。
2021年6月(開花期)
6月になりだいぶ新葉にも斑が入ってきています。そして,いよいよ2年目の開花期(通常6-7月)がやってきました!
花自体が楽しみなのと,昨年はせっかく生った実を楽しむタイミングを逃したので,「今年こそは」と期待して開花を待ちます。
2021年9月
が,なんとこの年は全く花が咲きませんでした。7月くらいまでは「今年は開花が遅いのかな?」と頻繁にチェックをしていましたが,もう9月。もう今年は咲かないのだと諦めました。
購入時は開花していたので”株が小さいから”とかではなく,環境要因なのだと思います。斑入りの常緑はとっても美しいですが,期待した花が咲かずとても残念でした。
2022年1月
この年は珍しく関東でも雪が降りました。マートルの上にもたくさん雪が降り積もりましたが全然問題なかったです。
一部の園芸サイトの情報では「マートルは耐寒性が低い」などの記述を見かけますが,実際育ててみるとかなり耐寒性は高いです。
2022年7月(開花期)
3年目の開花期(通常6-7月)がやってきました。もうこちらの写真は7月中旬ですが,この年も全然花が咲きません。。
このあと8月くらいまで粘って観察していましたが,「購入時の1年目に咲いていたのは幻か?」というぐらい全く花が咲かずにこの年の三回目の開花期を終えました。。
(肥料不足か?と思い多めにやったりしましたが,やっても/やらなくても咲かなかったので肥料は関係ないと思います。)
2022年10月
株は順調に成長して,サイズは高さ50cm, 横幅60cmといったところです。とは言え成長はゆっくりなのでとても育てやすいです。
2023年1月
1月下旬頃ですが,真冬とも思えないくらい葉が殆ど落葉せずに青々(斑入りですが)としています。葉は,冬になると斑の部分の黄色みが増しているように見えますね。
2023年4月
この年も問題なく冬越しし,春になりました。もう4年目の育成に入っています。
2023年6月(開花期)
開花期(通常6,7月)になってきました。
下の方に見える星形の青花は「アルペン・ブルー」という常緑多年草です。また,右下に見える植物は「ユーフォルビア(ウルフェニー)」です。
2023年7月(開花)
7月も下旬になり開花期の終盤となって「今年も開花しないのか」と諦めていた頃,よく見ると部分的に開花しているのを発見!
数本の枝先のみではありますが,3年前の購入時に見たのと同じ梅に似た白花が咲いているのを見かけました!
良く見ると球状の白い蕾もいくつか観られて,これからさらに咲きそうです。
先に咲いてきたと思われる花の後も見つかりました。
育成から3年経過,4年目の育成で購入以来の念願の開花を確認することができました!
ここでなかなか開花しなかった理由ですが,まず斑入り葉は一般のギンバイカと比べて開花しにくいです。また育成環境に起因したところでは,冬の寒風に当たると,花がつく枝先が痛むことで,花が咲かなくなるともいわれます。
今回の育成場所は,風通しの良い場所なので,株にボリュームが出るまでは株全体に冬場に寒風を受けて花がなかなか咲かなかったのかもしれません。
2023年10月(実の収穫)
実の収穫シーズンになってきました。株は成長し,高さ70cm,横幅は最大1mくらいに成長しています。花は少なかったものの,開花すればほぼ100%実が生るので,期待して実を探してみると・・・
こちらも3年ぶりの実を確認することができました!
初年度は,実を味わったりできなかったので,今回は忘れないように収穫して味見してみました。
食用可と言われることもありますが,ちょっとかじってみたところ,苦みに渋みもあり食べられたものはなかったです。。断面はこんな感じで白色です。中央部分に種が見えますね。
という訳で,待望の育成開始後の開花と実の収穫ができたということで,今回の記事は以上にしたいと思います。冬に落葉しない常緑の斑入り照り葉,美しくて本当におすすめです!
まとめ
今回は常緑低木『ギンバイカ(マートル)』の斑入り品種の成長記録を紹介しました。実際育ててみて,斑入りの照り葉は美しい上に常緑なので一年中楽しめ,(開花には苦戦したものの)花は存在感がありとても美しく,しかも非常に強健で育てやすいと,おすすめポイントの多いの常緑低木だと思いました。最大1mくらいの小型の庭木をお探しの際は,是非検討してはいかがでしょうか。
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