今回は,今夏に育成した小玉スイカの育成記録についてです。スイカと言えば,大玉と小玉がありますが,小玉スイカはサイズがコンパクトで扱いやすく,プランターでも育てやすいのが特徴です。
今回はそんな小玉スイカの中でも珍しい鮮やかなオレンジ色の実がなる「オレンジNo.1」という品種を育ててみました(育て方は普通の小玉スイカと変わりません)。スイカは,イチゴなどと比べると,ツルの手入れや,受粉からの経過日数や積算温度を考えた収穫など,気をつけるポイントは多いです。実際育ててみて,はじめてのプランターでの空中栽培での育成でしたが,無事に美味しいオレンジ色のスイカを収穫することができました。
基本情報
種類 | 草花 一年草 |
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英名/学名 | Water melon/Citrullus lanatus |
花色 | 黄色 |
開花時期 | 7-8月 |
最大横幅 |
1m(ツル性のため横に伸びますが,プランターでの空中栽培も可能。 育成の仕方や品種によりサイズは異なります。) |
耐暑性/耐寒性 | 強/弱 |
ツルの種類
・親ヅル:種から成長した茎とそこから伸びる1本のツルです。親ヅルは,育成初期に先端を摘心しますが,それ以降殆ど存在感がなくなります(もちろん子ヅルを支える土台なのでずっといる訳ですが)。
・子ヅル:親ヅルの摘心後に,親ヅルからニョキニョキと分岐して生えてくるツルです。太さは親ヅルとほぼ同じくらい,長さは1m程になります。この子ヅルに生えてくる,①雄花,雌花の位置管理と,②孫ツルの摘み取り,③人工受粉後の実の管理がスイカの育成のメインです。
・孫ヅル:子ヅルから生えている髭状の細いツルです。親ヅルからも生えます。実の栽培には不要なので,余分な栄養がいかないよう基本取り除きます。肥料が足りなくなるとクルクル曲がるので,施肥タイミングの参考にします(写真)。
雄花・雌花と受粉
・雄花(左):花の下の膨らみはありません。雌花と比べてたくさん咲きます。
・雌花(右):花の下にスイカの実になる膨らみがあります。
人工受粉は花の先端を軽くこすり合わせれば問題なく受粉します。雄花と比べて雌花は出来にくいので,慣れない場合は適切な節目(この後に説明)の前後に雌花ができたら迷わず受粉することをおすすめします。
受粉の時間は,開花タイミングに合わせて早朝に行うのが良いようです(花は一日で萎みます)。また,花粉が残っている限り同じ雄花で複数の雌花に連続して受粉可能です。
子ヅルの育成
ポイントとなる子ヅルの育成です。先に書いたように,①子ヅルに生えてくる雄花,雌花の位置管理と,②孫ツルの摘み取り,③人工受粉後の管理,がポイントです。
基本は実が大きくなる節目の位置に咲いた雌花を受粉して実を育成していきます。下記の目安です。
・小玉:15-20節目
・大玉:16-22節目
受粉をさせる位置の説明についてはサイトがいろいろありますが,こちらが一番分かり易すかったのでおススメです。
ただし,厳密にやり過ぎると受粉のタイミングを逃す場合があるので注意します。
施肥
植付け時の元肥と,受粉後にスイカの実がポンポン玉サイズになったときの2回が最低限必要のようです。生育に初期に肥料が過剰になると,ツルや葉が伸びすぎて花や実がつきにくくなる所謂”つるボケ”がおきるようです。
初心者の場合は,元肥にも追肥にも使えるスイカ専用の肥料もおススメです。
日当たり
日当たりを好みます。終日陽の当たる場所でも問題ありませんが,水枯れには気をつけます。
水やり
やや乾燥気味に育てると良いようです。水涸れし始めると葉の縁が巻き気味に縮んだ感じになるので,株の様子には良く目を配りながら水管理をします。プランターの場合は一日1回,たっぷり水やりすれば真夏でも大丈夫です。
成長記録
2023年6月5日:植え付け
小玉スイカ「オレンジNo.1」の苗を購入し,10号プランターに植え付け。我が家の南向きの庭の中でも,特に日当たりの良い場所に置きました。
植付けから3日後です。もう新しい葉がたくさん出て来て株が一回り大きくなっています。スイカはこれまで育ててき中でもかなり成長が早い植物です。
植付けから1週間が経過しました。もうプランターに土が見えない位に大きく育っています。
ちなみに,この本葉が5~6枚くらいの状態が親ヅルを摘心する適期ですが,初めての育成でなかなか踏み切れなかったのと,成長の速さに少し時期が遅れてしまいまいた。
2023年6月16日:親ヅルを摘心
ということで育成11日目でようやく親ヅルの摘心を行いました。こちらが摘心前の状態です。
親ヅルの先端を摘心した後です。(プランターの左下に摘心した親ヅルの先端が落ちています。)
初めてだと摘心後に本当に子ヅルが生えてる来るか不安になりますが,必ず生えてくるので適期(本葉が5~6枚に成長後)を逃さず摘心するようにします。
2023年6月24日:子ヅルの育成
ここから子ヅルを3~4本を目標に育てて行きます。
植付けから19日経過,摘心から1週間ほど経過しましたが,親ヅルの途中からニョキニョキと子ヅルが成長してきています。
少し見ずらいですが,こちらは別のところから生えてきた子ヅルです。
植付けから27日,摘心から2週間ほどが経過しました。
相変わらず見ずらいですが,上側に1本,右に1本,下に2本,子ヅルが成長しているのが分かります。
子ヅルが成長すると先端に近いとこから,細いひげ状の孫ヅルが勢いよく出てきます。とても成長旺盛なので,2日に1度は孫ヅルの摘み取り作業が発生し大変でした。。
適宜剪定ハサミなどで取り除きます。
また子ヅルが10節前後に伸びてくると,雄花に加えて雌花も咲き始めます。
冒頭の方に,雄花と雌花の違いを写真で載せていますが,雌花は次の写真のように花の下にスイカの実になる”膨らみ”があります。
まだ,受粉の目安となる位置(小玉:15-20節目,大玉:16-22節目)に達していないので,可哀そうですがこの雌花は摘み取りました。
2023年7月9日:受粉
受粉の目安となる位置(小玉:15-20節目,大玉:16-22節目)に近い”14節目”にできた2番花の雌花が咲いてきたので,はじめての人工受粉を行いました。
受粉は,開花タイミングの早朝に行うのが良いようです(花は一日で萎みます)。
次の写真のように,雄花を摘み取り,雌花のめしべにおしべを軽く擦り付けます。
同じように,別の子ヅルについた雌花も同じ雄花を使って受粉しました。今回(初回)の受粉は計2つです。
受粉から4日後の様子です。写真の左と右上にそれぞれ受粉後の2つの雌花が見えます。たっと4日しか経ってないのに,ちゃんと小さなスイカっぽくなっています。
あっという前に2~3cm大の小さなスイカに実に育つのでその成長の早さに驚きます。
小玉スイカは,受粉から35~40日,積算温度(1日の平均気温×日数)が850~900℃が収穫時といわれています。受粉(7月9日)から予定日の8月13~18日の予定日まで楽しみです!
2023年7月18日:施肥
こちら受粉から13日で,収穫まで残り2/3といった時期の様子です。順調に実が育っています。
だいぶ葉振りも良くなっていますが,実はピンポン玉大になってきた7月中旬頃に緩効性肥料(マグァンプK 小粒)を施肥しました。
肥料は茎の根本から少し離れた成長した根が廻る位置に撒くのがポイントのようです。
肥料は効果てき面で,数日おいて,青々とした葉がたくさん生えてきて,子ヅルの成長も良くなりました。
これまでの写真にもありましたが,肥料が足りなくなると孫ツルが螺旋状になるクルクル曲がるので,施肥のタイミングを計るのに参考にします。
2023年8月5日:裂果発生!
受粉から27日目で,収穫近づいてきた頃,ショッキングなことが・・・。
大事に育ててきた実の一つが裂果してしまいました。実の下側から真っ二つに割れてしまっています。
裂果の原因としては,乾燥と急激かつ過剰な水やりの繰り返しが継続することなどが原因と考えられています。
今回の場合,急に暑くなってきたこともあり,水やりを1日2回に増やしたのと,たまたま重なった降雨などで上記条件がそろってしまったことが原因と考えています。
なので以降は,降雨の状況も観ながら水やりのタイミングを1日1~2回相当になるように調整しました。
ちなみに裂果後ですが,2つあったスイカの実はこちらの写真の下側の残り1つになってしまいました。
理由は,7月9日以降に2つ同時に受粉して以降,雌花が育たたず,受粉のタイミングがなかったから。この理由は2つあります。
・受粉させる雌花の位置(15-22節)にこだわり過ぎた(の受粉タイミングが少なかった)。
・施肥すると実が生りにくいと言われています。14節目受粉後に施肥しましたが,施肥の影響のためか,15節目以降に生きの良い雌花が育ちませんでした。
以上から,慣れないうちは15節前後に雌花が咲いたら摘み取らず,早めに受粉させることも必要と思います。
記事の最後にもまとめていますが,ここが今回のスイカ育成で悔やまれるポイントです。
2023年8月9日:収穫(受粉からの経過日数?積算温度?)
残り1個となったスイカの収穫の時期が近づいてきました!まん丸で結構形も良く,15cm位に育っています!
スイカは,外見では熟れ具合が分かりません。そこで重要なのが,受粉からの経過日数と積算温度です。積算温度は,気象庁の過去の気象データなどを使って積算して計算します。
しかし,今回実際に計算してみると困ったことが。「受粉からの経過日数」は29日と小玉スイカの目安の35-40日まで6日ほどあるのにのにが,「積算温度」は867℃と目安の850-900℃に既に到達していてあと1日ほどで超えそうです。。
育成開始が通常より少し遅めであったのと(6月上旬),7~8月が異常に暑かったことが原因と思われます。
結局,時間だけで考えた「経過日数」より,時間と温度の両方を考えた「積算温度」の方が科学的だろうということ,もう1つの収穫のサインと言われる孫ツルの枯れが見られた(というより株全体が枯れ始めてきた)ので収穫を決断しました。
という訳で,受粉からの日数は短めですが,受粉からの経過日数は未達,積算温度は超過の下記の条件で8月9日の昼頃に思い切って収穫することにしました!
受粉からの経過日数:31日(8月9日時点)< 35-40日(小玉スイカの収穫目安) 未達
受粉からの積算温度:901℃(8月9日昼時点)>850-900℃(小玉スイカの収穫目安) 超過
勇気を出してヘタを切り,実を収穫しました!収穫時のスイカの実の大きさは直径15cm程でした。
収穫条件が微妙な中,スイカの中身がどうなっているのか?期待と不安が入り混じります。
せっかくの自家栽培なので,冷蔵庫で冷やした後にその日のうちに試食します!
それなりに大きいので力を入れて包丁をいれると,拍子抜けするほど簡単に,包丁を入れた瞬間にスパッと2つに切り分けられました。
ひと玉を1/4にカットしたのがこちらです。
オレンジ色の実がメロンのようなきれいな断面で,見た目からは早すぎも遅すぎもなく,丁度良いタイミングで収穫できていたようでした。ここでまずひと安心です。。と同時に,味への期待が高まります!
実際に食べてみると,これまでの経験のないような瑞々しさと程よい甘さで本当に美味しかったです。
ただ,強いて言えば収穫はやや早めだったかな(1~2日くらい?)という印象です。食感は熟したときの粉っぽさが全くなくシャキシャキで最高だったのですが,人によっては甘さの観点でもう少し追熟させても良かったと思うかもしれないです。
収穫タイミングについての結論は,経過日数と積算温度がアンバランスな場合は,積算温度を重視しつつ間をくらいをとるのがちょうど良いといったところです。
ただ美味しいことは間違いなく,普段夕食後のデザートで量食べないうちの子も,1/4切れ完食していました(笑)。
という訳で,初めてのプランターでの空中栽培での育成となりましたが,無事に美味しいスイカを収穫することができました!
まとめと反省点
今回は,小玉スイカの「オレンジNo.1」を育成してみました。無事収穫までたどり着きましたが,最後に事前に調べてもあまりでてこなかった「もっとこうすれば良かった」という改善点や,実際に育ててみて気付いた点をまとめます。
①育成全般
・どんなに暑い日が続いても,1日2回以上ペースの水やりを継続すると降雨や施肥と重なったりすると,裂果の可能性が高まる。
・肥料不足は,孫ヅルのクルクル具合で判断。(不足するとクルクルが強くなる)
②受粉:
・雌花の位置(小玉は15-22節目の理想と言われている)にこだわり過ぎて受粉をしないできると,雌花ができるタイミングを逃す可能性がある。保険をかけて10節目に以上できたら早めに受粉させる,先の節目で受粉に成功したら摘果する(育成経験が少ない方向け)。
③収穫時期:
・今回の育成では,受粉からの経過日数が足らず(理想:35-40日>31日),受粉からの積算温度は超過(理想:850-900℃<901℃)という条件で収穫でしたが,実際食べてみて収穫は『やや早め』だったという印象。経過日数と積算温度がアンバランスな場合は,間くらいをとるのが良いのかもしれない。
・孫ツルの枯れ具合でも収穫タイミングが判断できるので,実の近くの孫ツルは摘まないで伸ばしておく。
★★★★